名古屋の繁華街の真ん中・錦3丁目にある大黒屋本店は、安政元年(1854年)に名古屋・伏見で創業し、戦後に現在の中区錦に移転した落雁専門店の老舗である。米や豆など澱粉質の粉と砂糖のシンプルな素材で作られる落雁は、季節を彩る美しい和菓子として結婚式の引き出物や企業の記念品などに使われることが多く、こうした需要が一気に増えた昭和の時代には数多くの注文で賑わったのだという。ちょうど高度成長期のタイミングとも重なっていた。
さらに、昭和57年頃に、大黒屋では喫茶業を和菓子店に併設してスタートさせる。「名古屋の繁華街という立地を武器に、クラシック音楽が大好きな父が、クラシック喫茶をやりたい、という思いから喫茶業をはじめたようです。さらにビルの上階には、画廊や貸しホールなどもあるんですよ」と5代目・柘植千晴さんは話してくれた。大黒屋から和菓子をはじめとしたさまざまな文化が発信されているのである。
店頭には、季節をかたどった落雁はもちろん、四季折々の和菓子が並ぶ。喫茶室では、葛切りや白玉、夏にはかき氷が大人気。抹茶や日本茶だけでなく、コーヒーや紅茶も喫することができる。そして大黒屋の落雁で話題を集めた商品といえば、“なごや菓八菓”に選ばれた「生落雁 加加阿 cacao」である。2024年でちょうど創業170年を迎える老舗和菓子店が、さらに時代の先を見つめて新たな商品づくりの風穴を開けるきっかけになっただろう。
「Hisaya-odori Park」(久屋大通公園)は、南北1kmに渡って整備されている都市型の公園で、およそ真ん中には名古屋テレビ塔がそびえ立ち、ショッピングが楽しめる商業施設やレストラン・カフェのほか、北側の外堀通りに面した場所には広々とした芝生広場がある。
「子どもの頃には歩いてテレビ塔に登ったこともあり、この辺に住んでいる子どもにとっては遊び場でした。昔は川が流れていて、そこに入って遊んだことも良い思い出です。それが2020年に新しい公園として生まれ変わり、人の流れもずいぶんと変わったように思います。が、地元の人間にとってここはやはりいつまでも憩いの場。今でも時々散歩がてら、ふらっと遊びに行きます」と柘植さん。
テレビ塔の中にはホテルやイベントスペースがあり、外には噴水の広場があったり、景色も含めてエンターテインメント性の高い空間となっている。南には舞台のあるイベントスペースとなっており、年間を通じて様々な催し物が開催されている。ところどころにベンチや芝生スペースがあるため、大黒屋でお気に入りの和菓子を、久屋大通公園でドリンクを買えば、気軽に和菓子ピクニックができそうだ。