大正はいからさん

山田餅なるみ

山田餅なるみ店舗

店頭にずらりと並ぶ朝生菓子
その魅力を知るシアワセ

山田餅なるみは、山田餅本店(名古屋市瑞穂区)の創業者から数えて孫世代にあたる。山田餅なるみのご主人である山田研司さんは、中学生の頃から和菓子を作りたいと言っていた少年だった。大人になってその夢を叶えたのが、鳴海駅からほど近い場所にある山田餅なるみである。

結婚をしたのもちょうどその頃。夫婦2人で新しいお店をはじめたのだとか。女将の澄子さんは「和菓子を作ることしか知らない主人と、和菓子のことを何も知らない私が2人ではじめました」と懐かしそうに話す。若い夫婦にとって店舗経営ははじめてのこと。宣伝活動など何もできていなかったがゆえに、開店当時は不遇も経験した。

ところが、近くに大型商業施設ができて、定期的な出店をしたことを転機に。そこで若い世代が山田餅なるみの和菓子を購入してくれて、名前が知れ渡るようになったのだ。同商業施設の常設店以外の売店の中で、全国1位の売上を記録したこともあったほど。まだSNSなどなかった時代、口コミの力、つまり和菓子の実力が理解された、ということである。

もちろん、開店当時から和菓子づくりの基本は何も変えていない。朝一番にもち米を炊いて餅をつく、あんを炊く。ひとつひとつ丁寧に手作りする朝生菓子(※)を中心に、朝一斉に和菓子が店頭に並ぶ。それを目指して遠方からもお客様が訪れる地域の人気店となったのである。一方で、日持ちのする和菓子を進物用に求めるお客様も多いため、焼き菓子など日持ちのする和菓子も手掛けるようになり、今では、朝生菓子と日持ちのするお菓子の割合は半々程度。どんな需要にも応えてくれる商品ラインアップの和菓子店が近所にあるのは、確かにありがたい存在である。

欲しい生菓子がたまたま売り切れていると知ったお客様の落胆した顔を見た瞬間、「すこしお待ちいただければ作りますよ」と声を掛けていた女将さん。そのおもてなしマインドに触れただけで、ここの和菓子の美味しさが伝わってくるようだった。

※「朝生菓子」とは、作ったその日に食べることを前提として作られる日持ち1日の和菓子のことで、主に餅菓子が多い。

武士

季節のお菓子

  • 桜山
  • 琉球黒糖
  • 栗大福
  • 米粉のフィナンシェ
  • 桜山

    ふわっとした桜色の生地にこしあんが包まれている蒸し饅頭。桜の花がトッピングされて、春の風情たっぷり。

    ミルクティーとよく合うので、おうちで楽しむ場合はぜひティーカップを出して、春のお茶の時間を楽しんで欲しい、と女将のメッセージ。2月中旬〜4月頭の販売。

  • 琉球黒糖

    沖縄の黒糖を加えた寒天でこしあんを包んでいる。黒糖の奥深い甘さとこしあんがベストマッチ。

    暑いなか来てくれた方に、麦茶と一緒に食べて欲しいと願いが込められたもの。抹茶味もあり、こちらは食後の煎茶との組み合わせがおすすめ。

  • 栗大福

    山田餅なるみの看板商品でもある大福に、栗がまるごと1個ごろんと粒あんに包まれて入っている。

    大福の皮は、もち米100%ではなくもち粉でつくっているため、もちの主張が決して強くないが、栗の存在感をしっかり味わうことができる。

  • 米粉のフィナンシェ

    雪の結晶は、キラキラと輝く宝石のようにも見え、夢のある形とも言える。その雪の結晶の六角形を円形にして描いた文様。アオサ海苔をお餅と一緒について混ぜて焼き上げたサラダ味の軽やかなあられは、おやつやお酒のお供に。


山田餅なるみ

住所:名古屋市緑区鳴海町字花井14-1
TEL:052-622-3081
営業時間:平日 9:00〜18:00
定休日:月曜・火曜
URL:http://www.yamadamochi-narumi.com
SNS:


周辺情報

周辺情報

鳴海の人々とともにある、成海神社

山田餅なるみの真ん前のゆるやかな坂道をまっすぐ北へ進むと、大きな杜が見えてくる。この地域の人々から愛される成海神社である。

成海神社は、草薙剣が熱田神宮に還座された時に、ヤマトタケルの由縁によって鎮座されたと伝わっている。ヤマトタケルを主祭神に、妃であるミヤズヒメと兄神である建稲種命(タケイナダネノミコト)を配祀しており、1300年もの歴史を紡いできた。ヤマトタケルとミヤズヒメの恋物語は、名古屋の歴史を語る上でなくてはならないものであり、成海神社もその重要なファクターとして鳴海の地に鎮座しているのである。

春は桜の名所として、7月の夏祭りには屋台が出るので地元の小中学生が大集合、10月の秋祭りには山車が出揃う荘厳なものになるとのこと。お盆休みが終わると、地元の子供達は秋祭りのために笛の練習をするのが常なのだそうだ。年末年始には篝火(かがりび)がたかれ、一年の終わりと始まりに感謝するため、地域の人々が集まってくる。

山田餅なるみの女将・山田澄子さんによると、「鳴海の人は一生お世話になっている神社だと思います。うちの子供達も小さいころからずっと通っているのでいろいろな思い出があります。なんにもなくても成海神社にお参りするのが当たり前みたいな感じですね」山田餅なるみでお菓子を求めたあとは、お散歩気分で坂道をゆったり歩き、成海神社に参拝してみてはいかがだろう。名古屋の歴史を刻んだ物語を感じることができるかもしれない。

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