番頭さん

万年堂

万年堂店舗

干菓子の名店『万年堂は万年堂であれ』

万年堂のルーツは江戸初期にさかのぼる。先祖は藤堂高虎(とうどう・たかとら)に仕えた武士だったが、徳川との戦に敗れて商人の道へ。三重県津市にある津観音寺の横に食料品などを扱う「くわなや」という店舗を構えていた。

第一次世界大戦後、京都にお菓子の修行に出て京菓子を学んだのが現当主である加藤寛治郎さんの曾祖父。その後、和菓子業から離れた時期もあったが、第二次世界大戦を乗り越え、加藤さんの祖父が、名古屋の中心地・栄に創業する。それが“万年堂”としての始まりだったため、創業年は昭和24年となっている。

京菓子を学んだ創業者からの技の継承で、干菓子は当初から看板商品となっており、日本の戦後復興とともに万年堂は順調に商品数や店舗の規模を大きくしていく。昭和44年には新栄に移転。万年堂の季節を写しとった華やかで雅な干菓子は口コミで評判が広がっていった。女性の小さな口で食べられるようにという願いを込めた「おちょぼ」は万年堂を代表する干菓子となっていく。そして令和3年6月に、現在の覚王山へと移転。建物は新しく生まれ変わったが、商品のラインアップはもちろん、道具など全て新栄の時のものを使っている。

「万年堂は万年堂であれ」原材料はもちろん、技術、そして和菓子づくりの心。どんな時も変えることなくあれ、という祖先の言葉を今も肝に命じてお菓子作りに取り組んでいる、と加藤さんは語る。津観音寺に見守られて始めた商いを、現代になって覚王山・日泰寺の参道へと移転させたのは偶然ではなく、ご先祖様のお導きなのかもしれない。

お百姓さん

季節のお菓子

  • 藤結び
  • 賀茂川
  • 秋の干菓子
  • 頬杖(ほおづえ)
  • 藤結び

    藤結びという菓銘とこのお菓子の姿を見れば、これが春に咲く藤の花であることはすぐに分かる。藤の花が長く垂れて咲いている様子を、この縦筋で表現しており、白と紫それぞれの藤の花の姿を思い浮かべる人も多いだろう。

    北海道産の白小豆つぶあんを、薄く型取った藤模様の練り切りがやさしく包んでいる。

  • 賀茂川

    京都北西部を流れる賀茂川。この夏の生菓子は、小倉羊羹・錦玉羊羹・半きび羊羹の三層になっており、見た目がいかにも涼しげ。若葉が涼風に揺れ、川面には陽の光が輝いているような、そんな初夏の爽やかな風景が思い浮かぶ。

    真ん中の錦玉の透明感は、ガラスの器がよく映える。

  • 秋の干菓子

    万年堂を代表する干菓子たち。季節ごとの意匠で、美しい干菓子を作り続けている。こちらは秋の干菓子の、「ぼかしもみじ」。黄から紅へと変わりゆくグラデーションの美しいことといったら!

    秋の晴れた日に、紅葉した葉っぱを見上げながら森へと入っていく時の高揚感を思う。

  • 頬杖ほおづえ

    万年堂が作る和風ブッセ菓子が「頬杖」。北海道と備中の小豆をブレンドして炊きあげたつぶあんと、柚こしあんの2種類がある。ふっくらと焼きあがったブッセ皮が特徴的で、フワフワ食感なのに表面はサクサク。

    寒い冬にコタツに頬杖をつきながら、美味しそうに頬張る少女の様子が思い浮かぶ。


万年堂

住所:名古屋市千種区山門町2-34-1
TEL:052-753-3311
営業時間:9:00~17:30
定休日:火曜日 URL:https://www.nagoya-mannendo.co.jp/
SNS:


周辺情報

周辺情報

覚王山には都会の中の自然がいっぱい

新栄から覚王山へと移転した万年堂。緩やかな丘陵地である覚王山には身近に自然がいっぱいある、と加藤さんは語る。「夕暮れ時に、万年堂から東山通りまで出て西を見ると、名古屋の街に夕日が沈むシーンがとても綺麗に見えます。そして、日泰寺の東側の桜並木は春になると一年でいちばん美しい季節を迎えます。東山公園の方に足を伸ばせば、東山一万歩コースがあります。自然を満喫するスポットが、覚王山近辺には点在しているのです。お店を引っ越ししてから、四季折々の風景をたくさん発見することができています」と加藤さん。

約60haの東山動植物園を含む「なごや東山の森」は約400haの面積があり、なだらかな丘陵の大半は樹林で覆われ、水辺や湿地もあることから多様な動植物が生息している。この貴重な森林の財産を未来に引き継ぐために行政や企業、市民が協働して「なごや東山の森づくり」が行われている。つまり、万年堂のある覚王山から南東にかけては、都会の中の自然が守られたエリアであるということ。覚王山でまち歩きを楽しんだら、万年堂では手のひらにおさまるサイズの“小さな自然”を探しに行こう。

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