松河屋老舗(まつかわやろうほ)の創業は文久2年(1862年)。日本は、徳川家茂と和宮親子内親王の婚儀がおこなわれた江戸時代末期。松河屋老舗は、もともと岐阜にあり、清洲越で尾張名古屋にやってきた。ところが創業からの史料がすべて戦火で焼失しており、詳細が記されたものは残っていない。代々の言い伝えとしては、馬飼いの商いをしており、東海道筋の道ばたで馬を借りに来た人に向けて、団子などを売ることをはじめたのが、和菓子屋としてのルーツではないかと言われているそうだ。八事のあたりで和菓子屋ののれんを出していたが、現社長の祖父の時代に八事から栄へと店舗を移転して法人化を果たした。
「和菓子は日本人の生活に密着したものである」という考えのもと、季節ごとの上生菓子をはじめ、日持ちのするお土産品、焼き菓子や洋菓子のエッセンスを加えたお菓子など、実に幅広い商品で、名古屋人の和菓子愛に応えてくれている。本店のある栄に加え、100坪超の大型和菓子店を名古屋市郊外の清須市春日町にはオープンしている。そこはまるで和菓子のワンダーランドのごとく、小さなお子様から和菓子好きの大人までが楽しめる空間となっている。
面白いアイデアが湧くとすぐにその商品化に取り組み、新商品を次々に生み出す企業体質は、長い歴史が育んだチャレンジ精神なのかもしれない。松河屋の直営店では、一年に4回ほど開催される“感謝祭”では、そんなチャレンジが生み出した新商品が並ぶので、ぜひチェックして出かけてみたい。
住所:名古屋市中区栄4-9-27
TEL:052-262-0201
営業時間:9:00〜17:00
定休日:日曜日
URL:https://www.matsukawaya.jp/
SNS:
松河屋老舗から栄方面に歩いて10分ほどのところに、『栄公園』がある。愛知芸術文化センターのすぐ東側で、錦通りに面しているので、前を通りかかったことがあるという人も多いだろう。L字型の敷地で、東桜小学校の横の通路は北側に抜けることもできる。桜並木がとてもきれいな場所として、周辺の住民にはよく知られた空間である。
また特徴的なのは、公園の真ん中にある噴水とその周りのベンチ。女性像の彫刻作品がベンチに飾られているので、その隣に座ると、彫刻像とともに憩いの時を過ごしているようにも見えるのだ。桜が咲く季節、新緑がきれいな瞬間、また青葉が茂る夏、紅葉が見事な秋、時には雪景色まで、いろいろな表情を見せてくれる公園なのである。また真北に小学校があるため、日中は子供達の賑やかな声が聞こえてくるのものどかな風景である。
松河屋老舗で季節の和菓子を買った後は、自転車で、あるいはのんびり歩いて栄公園まで移動し、栄公園のベンチで和菓子を頬張りながら、空を眺めてみてほしい。都会の真ん中ではあるが、栄公園から見る空は思ったよりも広く高いことに、きっと驚くはずだ。空はいつも青空とは限らないが、雲は季節ごとに表情を変えるし、太陽は時間によって眩しく、時には感傷的に見えることもあるだろう。和菓子は、そんなのんびりした時間の過ごし方がよく似合う。