亀屋芳広の創業は、戦後すぐの昭和24年(1949年)。知多出身の創業者は、岡崎にある親戚の和菓子店で修行した後に、旧東海道沿いの伝馬町という歴史ある場所に店舗を構えた。夫婦二人で生菓子を中心に商いをはじめ、戦後復興とともに順調に事業を展開していく中で、出身地である知多から従業員を採用し、職人も増えていった。2代目になると機械化の導入や洋菓子生産、多店舗展開などに挑戦し、安定した経営基盤をつくる。そして平成27年(2015年)には現社長の花井芳太朗(よしたろう)さんが3代目を継ぐ。
創業以来、一貫して変わらないのは、“地元の和菓子屋であり続ける”ということ。「和菓子は地元のものであるべき、という考えを祖父と父から教えられてきました。だから地元の方々のために和菓子だけでなくお餅も作るし洋菓子も作る。でも地元エリアを出ることはないのです。地元を出たらその先には、またその地域の和菓子があるはずですから」と花井さん。熱田区伝馬町の本店をベースに愛知県内のみでの店舗展開をする理由を教えてくださった。
また、地元熱田のさまざまな情報をまとめたものを、各店舗で手渡ししているのだとか。熱田の観光地をそのまま菓銘にした商品も数多くあり、とにかく亀屋芳広は“熱田色”に染まっているのである。和菓子を通じて、地元熱田に貢献し、それが熱田のまちづくりにつながって欲しい。そんな強いメッセージを和菓子から受け取ることができる。地域の歴史や文化と密接な関係性を持つのが和菓子の大きな特徴なので、そういう意味で本来の和菓子屋としてのアイデンティティを持ち続けている稀有な存在である、とも言える。
住所:名古屋市熱田区伝馬町1-4-7
TEL:052-682-0387
営業時間:平日9:00~18:00
土曜・日曜・祝日 8:30~18:00
定休日:なし
URL:http://www.kameya-yoshihiro.co.jp/
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花井さんにお店の周辺の観光情報を尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。「宮の渡し公園、熱田神宮といった有名な観光スポットだけでなく、熱田には歴史を紐解くのに重要な場所がたくさんあるので、ひとつにしぼることが難しいんです」と。
けれど話は終わることなく、次々におすすめの熱田情報を教えてくださった。白鳥庭園の周辺や断夫山古墳、昔の魚河岸、宿場町の名残を感じる民家、花井さんが子供のころに偶然掘り当ててしまった貝塚のこと、はたまた大津通りを伝馬町から市役所まで練り歩く提灯行列の話まで。
「熱田は東海道随一の宿場町でしたが、それ以前から長く古い歴史を持っています。この歴史は地元で和菓子屋をさせてもらっているわたしたちが語り継いでいかなければいけない。名古屋市外からお越しになる方にも、そしてなにより名古屋の人に知って欲しいと思います」と花井さん。そこで、今回の観光情報はあえて一か所にしぼらず、熱田全体にどんなスポットが点在しているのかを、亀屋芳広で制作された熱田マップで紹介することとなった。
亀屋芳広には熱田の史跡を和菓子で表現した「尾張銘菓シリーズ」があり、それらの和菓子を紹介するためのマップなのである。亀屋芳広で熱田や地名にまつわるお菓子を買ったら、ぜひこのマップを片手にサイクリングやウォーキングを楽しんでほしい。和菓子でめぐる熱田の旅の、はじまりはじまり。